人財育成
1998年、大学4年生、22歳の時にITベンチャーを創業し、爾来、2005年まで一応社長という立場で多くの社員を抱える会社の第一線に立っていたわけだが、自分自身、今でも苦労し、苦手だと感ずるのは人財育成である。
元々自分でなんでもやってしまう、いわゆる職人肌気質なところがあり、人からもよく指摘されるのだが、なかなか人に任せることができない、的確な指示を出すことができないことがある。
そんな自分が経営者時代に法経学部で経営学を学んだ後輩から教わり、いまでも実戦しているのが「OJT=On the Job Training」だ。
そもそも、小規模なITベンチャーであった我々の会社は、新人のためにわざわざ時間と予算を割いて研修会を開くなどという余裕はなく(一年に一度、全社員参加のビジネスマナー研修会を行う程度)、正社員はもちろん、アルバイトであっても、入社した当日から実戦の現場にぶち込むという無茶ぶりだった。
あるアルバイトスタッフは、入社したまさにその日に、某製作所との某県庁のシステム構築に関する打合せに同行してもらう、その帰り道、その案件で使うプログラミング言語の本を書店で購入し、「これ、がんばってやって」と渡すというドSっぷりだ。 我々がなぜその判断をしたかと言えば、「今回の案件は我々が初めて取り組むプログラミング言語だから、我々が担当しようと、新人が担当しようと変わらない。なら新人にやってもらおう」というなんとも乱暴なロジックであった。 もちろん、新人の彼に任せっきりにしたわけではなく、ベテランのプログラマーがしっかりついて無事納品したけれども。
そんなようすを前出の法経学部の彼は「OJT、やってますよ」と評したわけである。
実践の場でこそ、人は育つ。いくら研修会を重ねたところで、それはあくまで研修会での話であり、実戦の場は緊張感や重大性が全く違う。まさに本番の勝負の場。私や他の社員からのアドバイスよりも、お客さんからの言葉の方が何倍、何百倍も重く、響く。 お客さんの「いい仕事をしてくれて、ありがとう」ということばに勝る賛辞はないのだ。
元々、研修会嫌いの私であることもあり(苦笑)、いまでもスタッフにはあまり研修会をおすすめしない。 それなら、現場に出て、実践を積んでもらうことを選択する。これはある意味リスクのある方法でもある。未経験なスタッフがトラブルを起こすことも十分にあり得る。 でも、その時は自分がしっかり謝れば良いと思っている。
組織において、褒められるのは社員であるべきで、責められるのは経営者であるべきだ。 チームに言い換えれば、褒められるのは選手であり、責められるのは監督であれば良い。
IT人財の採用において、私は「資格」の欄は一切無視する。そこに「パソコン検定○級」とかずらずら書かれていても、所詮は資格。実戦ではなんの役にも立たない。むしろ「趣味」や「特技」欄に「ウェブサイト制作」とか「システム開発」とか書いてある人財の方がよほど「できる」 だから、面接の時に必ず聞いたのは「趣味で作っているウェブとかシステムとかありますか?」ということだった。
人財育成がまるっきりダメダメな私であるが、これからも「OJT」的な手法だけは貫いていくつもりだ。 4月にはウェルスポにも新たな若い人財が加わる予定である。すぐさま現場に出し、混乱する顔がいつか自信に満ちあふれた顔に変わっていくことを楽しみにしている。
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